
武豊町、某日。
夏の名残の蝉が、まだ少しだけ鳴いています。
「また虹色のグルグルか……」
画面の真ん中で、虹色の円盤が優雅に回っています。人の仕事を止めておいて、本人だけが楽しそうに回っている。憎い。
相棒は MacBook Air M1、メモリ 16GB。そこへ Chrome、Node.js、Adobe という大食漢たちを住まわせているのだから、無理もありません。16GB のアパートに大男が3人。台所はいつも取り合いです。動作が遅いのは、まだ我慢できます。本当に困るのは、待っているあいだに考えが逃げてしまうことです。考えというのは小鳥に似ています。捕まえかけたところで待たされると、ふいと、どこかへ飛んでいってしまう。
そこで Mac mini M4 Pro、メモリ 64GB、ストレージ 1TB を注文しました。それが今日、届きました。

ノートをやめて、デスクトップにする
Air といっても、わが家の Air は一度も空を飛んだことがありません。ずっと蓋を閉じたクラムシェルのまま外部ディスプレイにつながれて、外に持ち出されたこともない。空の名前を背負いながら、本人はどうも、貝になりたかったようなのです。それならばと、後任は最初から飛ばないデスクトップにしました。Mac mini です。
M5 を待つか、いま買うか
迷ったのは時期です。待てば M5 が出るかもしれない。しかしメモリ値上がりの噂もあり、待ったぶんだけ同じ構成が高くつく可能性もある。未来のことは誰にもわかりません。わかっているのは、いまこの瞬間も私の思考がグルグルに止められているという事実だけです。考えるのをやめて、注文しました。
368,800円でした。値段についても、考えるのをやめることにしました。
64GB は思考を止めないための投資
メモリは 16GB から 64GB へ、一気に4倍です。少し多すぎるかとも思いましたが、もう二度とメモリ不足のストレスで悩みたくない。アパートを建て替えるなら、廊下は広いほうがいいのです。
果たして、引っ越してからグルグルは一度も現れていません。大量の Chrome のタブを開きっぱなしのまま、Node.js、Photoshop、Figma、Docker、Cursor を一斉に動かしても、64GB は涼しい顔をしています。メモリの残りを横目でうかがいながら、アプリをひとつ、またひとつとそっと閉じていく。夜の戸締まりにも似たあの侘しい儀式も、気がつけば、もうしなくなっていました。
道具への投資は、時間と思考への投資です。毎日グルグルを眺めながら「まだ使える」と粘っているあなた。その待ち時間に飛び立っていった小鳥たちのことを、一度だけ数えてみてください。

後日。
いまのところ、英断だったと思っています。
机の上では、銀色の小さな箱が音もなく考えごとをしていて、そのまわりには、いつのまにか小鳥たちが集まってきています。夏が終わるころ、また気まぐれにどこかへ飛んでいってしまうのかもしれません。
窓の外では、夏が終わろうとしています。